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サブリース規制は、誰に何を義務づけているのか

一棟のアパートを丸ごと借り上げ、空室があってもオーナーには一定の家賃を支払う。そう提案されると、面倒な募集や管理から解放されるように聞こえます。実際、この仕組み自体は違法でも何でもありません。ただ、契約期間中に家賃が下げられた、思っていた条件と違った、というトラブルが繰り返されてきた経緯があり、そのために法律で契約前の手続きが定められています。

根拠になっているのは、令和2年6月19日に公布された賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律です。国土交通省のサブリース事業に係る適正な業務のためのガイドラインは、特定転貸事業者(サブリース業者)に対する行為規制として、誇大広告等の禁止(法第28条)、不当な勧誘等の禁止(法第29条)、契約締結前における契約内容の説明及び書面交付(法第30条)、契約締結時における書面交付(法第31条)、書類の閲覧(法第32条)を挙げています。これらのサブリース規制は令和2年12月15日から施行されています。

ここで押さえておきたいのは、これらの規制が管理業者の登録制度とは別に置かれており、登録の有無にかかわらず及ぶという点です。国土交通省のよくある質問は、営利の意思を持って反復継続的に賃貸住宅の転貸を行う場合は、その規模によらず規制が課されると説明しています。戸数が少ないから対象外、という理屈は成り立ちません。

対象になるのは事業者本人だけではありません。ガイドラインは、サブリース業者がマスターリース契約の締結についての勧誘を行わせる者を「勧誘者」と位置づけ、勧誘者に対しても誇大広告等の禁止(法第28条)と不当な勧誘等の禁止(法第29条)を義務づけていると述べています。建設を請け負う会社や売買を仲介する会社から話を持ちかけられた場合でも、その勧誘は規制の外にあるわけではない、ということです。

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契約前に説明されるはずの事項

法第30条は、特定転貸事業者に対し、契約を結ぼうとする相手方へ書面を交付して説明することを義務づけています。国土交通省のポータルサイトは、契約締結前に14項目の重要事項を記載した書面の交付と説明を義務づけていると整理しています。ガイドラインの別添「特定賃貸借契約 重要事項説明書<記載例>」を見ると、事業者の商号等、対象となる賃貸住宅、契約期間に関する事項、家賃その他賃貸の条件に関する事項、維持保全の実施方法、維持保全の費用負担に関する事項、維持保全の実施状況の報告、損害賠償額の予定又は違約金、責任及び免責、転借人の資格その他の転貸の条件、維持保全の内容の転借人への周知、契約の更新又は解除に関する事項、契約終了時の権利義務の承継といった面が並んでいます。

項目名だけ見ると事務的ですが、実際にトラブルになるのは、まさにこの並びです。家賃はいくらで、いつ、どういう条件で見直されうるのか。建物の維持保全は誰がどこまで行い、その費用はどちらが負担するのか。契約を終わらせたいとき、どういう手順を踏むのか。どれも、説明を受けた「はず」で流してしまうと、あとで取り返しがつきません。

ですから、説明の場では書面を受け取るだけでなく、いま挙げた項目が書面のどこに書かれているかを、その場で指し示してもらってください。項目が書面に存在することと、内容が自分の理解と一致していることは別の話です。

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家賃は改定されうる、という前提から読む

サブリースで最も誤解が生じやすいのが家賃です。一定額が保証されると聞いていたのに、数年後に減額を求められた、という相談は繰り返し起きてきました。この点について、国土交通省のよくある質問は、広告で「家賃保証」等の文言を用いる場合、その文言に隣接する箇所に、定期的な家賃の見直しがある場合にはその旨、及び借地借家法第32条の規定により減額されることを明確に表示する必要がある、と説明しています。

つまり、家賃が動きうること自体は制度の前提として織り込まれており、隠して募集することが禁じられている、という建てつけです。裏返せば、家賃が絶対に下がらないという説明を受けたのであれば、その説明のほうを疑う根拠になります。「家賃保証だから安心」と言い切る説明は、法が想定している説明のしかたではありません。

ガイドラインの重要事項説明書記載例は、この点をかなり具体的に書くよう求めています。家賃改定日における見直しにより家賃が減額となる場合があること。借地借家法第32条第1項(借賃増減請求権)が適用されるため、家賃改定日以外の日であっても、租税その他の負担の増減により不相当となったとき、土地建物の価格の変動その他の経済事情の変動により不相当となったとき、近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときには、契約の条件にかかわらず事業者が減額を請求できること。契約期間中においても家賃は変更になることがあること。これらが説明されているかを、書面上で確かめてください。

同じ記載例は、事業者に有利な話だけでなく限界も書くよう求めています。空室の増加や事業者の経営状況の悪化が生じたとしても、右の三つの要件のいずれかを満たさない限りは借地借家法第32条に基づく減額請求はできないこと。また、減額請求を受けたオーナーが必ずその請求を受け入れなければならないわけではなく、変更前の家賃決定の要素とした事情等を総合的に考慮したうえで、協議により相当家賃額が決定されることになること。減額の話が出たときに立ち返る先は、まずこの記載です。

そのうえで確かめるべきなのは、金額そのものよりも改定の条件です。何年ごとに見直されるのか、どういう事情があると改定の協議が始まるのか、協議が調わないときはどうなるのか。この三つが書面でたどれるかどうかで、契約後の見通しは大きく変わります。なお、実際の改定がどう扱われるかは個別の契約内容と事情によって判断されますので、書面の文言を持って専門家に相談する価値のある場面です。

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免責期間と維持保全は、書面のどこに書かれているか

引渡しの直後は入居者がいないため、一定期間は家賃を支払わないという条件が置かれることがあります。いわゆる免責期間です。ガイドラインの重要事項説明書記載例では、家賃その他賃貸の条件に関する事項の中に「引渡しに係る借上げ家賃の支払い免責期間」と「退出募集に係る借上げ家賃の支払免責期間」という二つの欄が設けられています。つまり、引渡し時だけでなく、入居者が退去して次の募集をする局面についても、免責期間の有無と長さが書面に書かれる想定になっています。

この二つは資金繰りに直接響きます。何か月なのか、入居者の入れ替えのたびに繰り返されるのか。欄が空欄のまま渡されたのであれば、定めがないのか記入漏れなのかを、口頭ではなく書面上ではっきりさせてください。

維持保全についても同じです。重要事項説明の記載事項には、事業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法と、その費用負担に関する事項が挙げられています。記載例では、玄関・廊下・階段などの点検清掃、自動火災報知器や消火設備の法定点検、修繕の見積り・手配、苦情対応といった項目ごとに、誰が実施し誰が費用を負担するのかを一つずつ記入する様式になっています。日常の清掃や点検はどちらが行うのか、設備が故障したときの修繕費はどちらの負担か、金額の上限は決まっているのか。ここが曖昧なままだと、保証されているはずの家賃が入ってきても、想定外の支出でならされてしまいます。

費用の分担は、金額の大小より「誰が決めるのか」を見ておくと判断しやすくなります。修繕の要否と発注先を事業者が単独で決められる定めになっているのか、オーナーの承諾を要する定めになっているのか。この一点で、毎年の支出の読みやすさがまったく変わります。

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解約のとき、何が起きるのかを先に見ておく

サブリース契約は、始めるときよりも終わるときのほうが難しい、と言われます。説明事項には契約の更新又は解除に関する事項が含まれていますので、契約前にその条項を読み込んでおくことができます。どちらから、どれだけ前に申し入れる必要があるのか。違約金の定めはあるのか。契約が終わったとき、入居している転借人との関係はどうなるのか。

ここで制度上もっとも重要なのが、オーナーの側と事業者の側で終わらせやすさが対称ではない、という点です。ガイドラインの重要事項説明書記載例は、契約期間中においても事業者から解約の申し入れをすることにより解約できる一方、この契約には借地借家法第28条(更新拒絶等の要件)が適用されるため、オーナーから更新を拒絶する場合には正当の事由があると認められる場合でなければすることができない、と説明するよう求めています。考慮される事情として挙げられているのは、オーナー及び事業者(転借人である入居者を含む)が建物の使用を必要とする事情、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び現況、そして立退料など財産上の給付の申出です。

つまり、法律上の規制はサブリース業者を縛るだけでなく、終了の場面ではオーナーの側に正当事由という重い要件を課します。サブリースの説明でこの点が触れられていなければ、それ自体が不十分な説明ということになります。

転借人との関係も見落とされがちです。記載例では、契約が終了した場合にオーナーが転貸借契約における事業者の転貸人の地位を承継すること、承継した場合には正当な事由なく入居者の契約更新を拒むことはできないこと、敷金返還債務も承継することが書かれています。契約が終わったその日から、入居者に対する貸主は自分になる、という前提で書面を読んでください。

そのうえで、実際に自分の計画どおりに終わらせられるかどうかは、契約書の文言と個別の事情の両方で決まります。終了の見通しが重要であれば、書面を手に、契約前の段階で専門家に相談しておくのが確実です。

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相手の経営状態は、閲覧を求めて確かめられる

何十年と続く契約を結ぶ相手ですから、その事業者が続くのかどうかは、家賃の条件と同じくらい重要です。この点について法は、もう一つの手がかりを用意しています。法第32条の書類の閲覧です。

国土交通省のポータルサイトは、この規定について、業務状況調書、貸借対照表、損益計算書を営業所に備え置き、三年間閲覧に応じることを義務づけていると説明しています。閲覧を求めることは、無理な要求でも失礼な要求でもなく、法律が前提としている手続きです。応じない事業者には行政処分や罰則の対象となる旨も、ガイドラインの一覧表に記載されています。

実際に数字を読み解くのが難しくても、求めたときの反応そのものが情報になります。すぐに出せるのか、渋るのか、そもそも備え置いていないのか。契約前に一度、閲覧を申し出てみてください。

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電子で受け取る場合と、検討にかける時間

書面は紙とは限りません。法第30条第2項は、一定の要件のもとで電磁的方法による提供を認めており、その場合は書面を交付したものとみなされます。契約締結時の書面についても、法第31条第2項で同様の扱いが定められています。メールやシステム経由で受け取ること自体は問題ないということです。

ただし、電子で受け取るときこそ、手元に残す工夫が要ります。ファイルを保存したか、あとから開けるか、説明を受けたのがいつでどのファイルだったかが分かるか。紙であれば自然に残るものが、電子だと流れてしまいがちです。受け取ったその日に、日付の分かるかたちで保存しておいてください。

そして、時間です。国土交通省のよくある質問は、重要事項の説明から契約締結までに一週間程度の期間をおくことを推奨しています。これは義務ではなく推奨ですが、裏を返せば、その場で判断させようとする進め方は、国が想定している段取りとは違うということです。説明を受けた日に署名を求められたら、いったん持ち帰ってかまいません。持ち帰ったうえで、書面を手に、家賃改定・費用分担・解約の三点を自分の言葉で説明できるかどうかを確かめる。その一週間が、あとの十年を左右します。

相談の前に確かめるチェックリスト

  • 契約前に、書面を交付したうえでの重要事項説明を受けたかを確かめる
  • 家賃の改定条件(時期・きっかけ・協議が調わないとき)を書面上でたどる
  • 免責期間の有無と長さ、更新時や入替時にも置かれるかを書面で確認する
  • 維持保全の実施範囲と費用の分担、修繕を誰が決めるのかを書面で確認する
  • 引渡し時と退出募集時の二つの免責期間が、それぞれ書面に記入されているかを見る
  • 解約の申入れ期間、違約金、契約終了時に転貸人の地位を承継する定めを契約前に読み込む
  • オーナーからの更新拒絶に借地借家法第28条の正当事由が必要である旨が説明されたか確かめる
  • 法第32条に基づき、業務状況調書・貸借対照表・損益計算書の閲覧を求めてみる
  • 説明から契約まで一週間程度の検討期間をとり、その場では署名しない
制度の一般的な考え方をまとめたものです。実際の取扱いは契約の内容や個別の事情によって変わります。判断が必要な場面では、不動産会社や専門家、行政の相談窓口にご確認ください。