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まず、どの統計を見ればよいのか

中古住宅の予算を考えようとすると、真っ先に知りたくなるのは「みんないくらで買っているのか」だと思います。この問いに公的な形で答えている資料のひとつが、国土交通省が毎年行っている住宅市場動向調査です。この調査は、住み替え・建て替え前後の住宅や、その住居に居住する世帯の状況、住宅取得に係る資金調達の状況などを把握し、今後の住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的として実施されています。統計法にもとづく一般統計調査で、平成13年度から続いており、令和7年度の調査は25回目にあたります。

大事なのは、この調査が「取引された物件の価格」を集めたものではなく、「実際に住み替えた世帯に尋ねた回答」を集計したものだという点です。令和7年度調査は、2024年4月から2025年3月に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯が対象で、既存(中古)住宅については新築後に他の世帯が居住していた住宅を購入し、入居済みか手続きが済み次第入居予定の方に調査票が配られています。標本調査ですから、ここに出てくる金額は地域の実勢価格そのものではありません。

もうひとつ、読むときに外せないのが調査地域の違いです。令和7年度調査では、注文住宅と既存(中古)住宅は全国が対象ですが、分譲住宅・民間賃貸住宅・リフォーム住宅は三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)が対象とされています。住宅の種類をまたいで数字を並べるときは、全国の数字と三大都市圏の数字を比べていないかを確かめてください。

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中古住宅を買った世帯の購入資金は、いくらか

令和7年度住宅市場動向調査報告書の「5.4.1 購入資金」には、既存(中古)戸建住宅取得世帯の購入資金は平均2,966万円、そのうち自己資金は1,130万円で自己資金比率は38.1%、と書かれています。既存(中古)集合住宅取得世帯は購入資金の平均が3,321万円、自己資金が1,329万円で自己資金比率は40.0%です。そして同じ項に、住宅購入資金合計の中央値はそれぞれ2,650万円、2,750万円と明記されています。

ここで手を止めていただきたいのが、平均値と中央値の差です。戸建では平均2,966万円に対し中央値は2,650万円、集合住宅では平均3,321万円に対し中央値は2,750万円で、とくに集合住宅では500万円を超える開きがあります。平均値は高額で購入した一部の世帯に引き上げられやすいため、「まんなかあたりの人がいくらで買ったか」を知りたいなら中央値のほうが感覚に近くなります。どちらが正しいというより、性質が違う数字だと考えてください。

なお、この数字はあくまで「既存(中古)住宅取得世帯」のものです。同じ調査の結果概要では、購入資金の平均値が注文住宅で7,646万円、分譲集合住宅で6,443万円、分譲戸建住宅で5,099万円と、住宅の種類ごとにまったく違う水準が示されています。ただし前の節で触れたとおり、注文住宅と既存住宅は全国、分譲住宅は三大都市圏の数字です。住宅の種別や調査地域を取り違えると、予算の見積もりは丸ごとずれてしまいます。

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なぜ中古を選んだのか、という回答から読めること

同じ報告書の「5.1(7)既存(中古)住宅にした理由」では、既存(中古)戸建住宅取得世帯・既存(中古)集合住宅取得世帯のいずれも「予算的にみて、既存(中古)住宅が手頃だったから」が最も多く、それぞれ70.0%、72.2%と集計されています。次いで多いのが「新築住宅にこだわらなかったから」で、それぞれ39.9%、42.2%です。複数回答の設問なので、合計が100%になるわけではありません。

この結果は、中古を検討する人の多くが価格を軸に選んでいることを示しています。一方で、同じ章の「5.1(5)妥協したもの」では、既存(中古)戸建住宅取得世帯の22.5%、既存(中古)集合住宅取得世帯の24.6%が「価格(予定より高くなった)」を挙げ、どちらでも最も多い回答になっています。予算で中古を選んだ人たちの2割強が、結果として当初の予定より高い買い物になったと答えているわけです。最初に組んだ予算がそのまま着地しないことは、決して珍しくないと考えておいたほうが安全です。

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借りるか、手持ちを出すか:資金の組み立て方

予算を考えるときは、総額と同じくらい「その内訳をどう組むか」が効いてきます。令和7年度調査では、既存(中古)戸建住宅取得世帯の自己資金比率が38.1%、既存(中古)集合住宅取得世帯が40.0%と集計されています。自己資金の内訳はどちらも「預貯金、有価証券の売却代金、退職金」が最も多く、借入金の内訳もどちらも「民間金融機関(フラット35以外)」が最も多いと報告されています。

また「5.4.4 住宅ローン」では、住宅ローンがある世帯の割合が既存(中古)戸建住宅取得世帯で48.6%、既存(中古)集合住宅取得世帯で49.5%とされています。裏を返せば、中古住宅ではローンを組まずに取得した世帯も一定数いるということです。この割合は年度によって大きく動き、同じ調査の経年比較でも前年度は戸建63.2%、集合住宅52.8%でした。断定せずに「そういう幅がある」という受け止め方をしてください。

ご自身の予算を考えるときは、統計の平均を目標額にするのではなく、用意できる自己資金と、無理なく返せる毎月の返済額から逆算していくほうが現実的です。借入可能額と返済可能額は別のものですし、審査の可否や金利の条件は金融機関ごとに異なります。

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物件価格のほかにかかるお金(1)仲介手数料

不動産会社に売買を仲介してもらったときの報酬には、上限が定められています。根拠は「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」という国の告示(昭和45年10月23日建設省告示第1552号、最終改正は令和6年6月21日国土交通省告示第949号)です。その第二「売買又は交換の媒介に関する報酬の額」では、依頼者の一方から受け取れる額として、取引価額のうち200万円以下の金額に100分の5.5、200万円を超え400万円以下の金額に100分の4.4、400万円を超える金額に100分の3.3を乗じた額を合計した金額以内、と定められています。この割合には消費税等相当額が含まれます。

つまりこれは「上限」であって、必ずこの額になると決まっているわけではありません。また同じ告示の第七には、低廉な空家等(売買に係る代金の額が800万円以下の宅地または建物)の媒介についての特例があり、媒介に要する費用を勘案して第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受け取ることができ、ただしその額は30万円の1.1倍に相当する金額を超えてはならない、と定められています。価格の低い物件では、割合計算より高い手数料になり得るということです。

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物件価格のほかにかかるお金(2)登記と契約にかかる税

所有権を自分に移す登記には、登録免許税がかかります。国税庁のタックスアンサー「No.7191 登録免許税の税額表」によると、売買による所有権移転登記の税率は、土地・建物ともに本則で1,000分の20です。ただし土地の売買による所有権移転登記については、令和11年3月31日までに登記を受ける場合、1,000分の15に軽減されるとされています。住宅用家屋についても、要件を満たす場合の軽減税率が令和9年3月31日までの措置として別に定められています。住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記にも同じく令和9年3月31日までの軽減措置があり、いずれも期限つきの措置である点に注意してください。

売買契約書には印紙税もかかります。国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表」によれば、不動産の譲渡に関する契約書は第1号文書にあたり、記載された契約金額に応じて税額が決まります。さらに「No.7108 不動産の譲渡に関する契約書の印紙税の軽減措置」では、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される契約書について軽減後の税額が定められており、たとえば契約金額が1,000万円を超え5,000万円以下のものは1万円、5,000万円を超え1億円以下のものは3万円とされています。この軽減は契約金額が10万円以下のものには適用されません。これも期限のある措置です。

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物件価格のほかにかかるお金(3)不動産取得税

不動産を取得したときには、都道府県が課す不動産取得税がかかります。東京都主税局の案内では、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得したときに、取得した方に対して課税される税であると説明されています。有償・無償を問わず、登記の有無も問わないとされる一方、相続による取得は非課税とされています。課税標準は取得した不動産の価格で、新築・増築家屋等を除き、原則として固定資産課税台帳に登録されている価格が基準になります。購入した金額そのものではない、という点がまず押さえどころです。

税率には期限つきの特例が設けられており、東京都の案内では平成20年4月1日から令和9年3月31日までの取得について特例の税率が示されています。また免税点があり、取得した不動産の価格が一定額に満たない場合には課税されません。免税点の額は取得日によって変わることが案内されています。中古住宅やその敷地については、要件を満たすと課税標準から一定額を控除する軽減の仕組みもあり、控除額は建築された時期によって異なるとされています。ここで挙げたのは東京都の案内であり、全国一律の制度ではありません。税率も軽減も自治体の運用と改正に左右されるため、金額を見込む前に、購入しようとしている物件がある都道府県の公式ページで確認してください。

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住宅ローン控除は、金額より先に要件を見る

中古住宅でも、条件を満たせば住宅借入金等特別控除、いわゆる住宅ローン控除の対象になり得ます。国税庁のタックスアンサー「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」は、令和4年1月1日から令和12年12月31日まで(2022年から2030年まで)に居住を開始した場合の取扱いをまとめたページです。原則の要件として、取得の日から6か月以内に居住し、適用を受ける年の12月31日まで引き続き住んでいること、床面積が50平方メートル以上で、その2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること、その年の合計所得金額が2,000万円以下であること、償還期間10年以上の住宅ローンであること、そして建築後使用されたことのある家屋で耐震基準に適合するものとして証明等がされたものであること、などが挙げられています。この耐震基準については、昭和57年1月1日以後に建築されたものであることという要件も示されています。生計を一にする親族や特別な関係のある者からの取得でないこと、贈与による取得でないことも要件とされています。

ただし、床面積の要件には別枠があります。同じページは、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の居住用家屋を「小規模居住用家屋」、それに該当する既存住宅を「特例既存住宅」と呼び、一般の中古住宅とは分けて要件を示しています。特例既存住宅の場合は、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満であり、かつ床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること、そして合計所得金額が1,000万円以下であることが要件とされています。50平方メートルに届かない住まいでも対象になり得る一方で、所得の上限は原則の2,000万円ではなく1,000万円に下がる、という関係です。広さが足りないから対象外だと早合点することも、所得の上限は一律2,000万円だと思い込むことも、どちらも起こりやすい取り違えです。

控除の中身は、居住を開始した年によっても区分されています。認定長期優良住宅・認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅については、令和4年から令和7年まで(2022年から2025年まで)と、令和8年から令和12年まで(2026年から2030年まで)とで、控除期間と控除限度額の扱いが分かれます。これらに当てはまらない「その他の住宅」は、令和4年から令和12年まで(2022年から2030年まで)を通して控除期間10年、各年の控除額は年末残高等の0.7%(控除限度額14万円)とされています。どの区分に入るかで結論が変わるので、金額を当て込む前に、自分が住み始める年と住宅の区分を先に確かめてください。

要件はこれだけではなく、以前に住んでいた家を売ったときの特例を一定期間内に使っているかどうかも関わってきます。控除額だけを先に当て込んで予算を組むと、要件を外していたときに計画が崩れます。税制は改正されますので、実際に適用できるかどうかは、国税庁の該当ページと、必要であれば税務署でご確認ください。

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統計を自分の予算に翻訳するときの順番

ここまで見てきた数字を、どう自分の話に落とすか。おすすめしたいのは、統計の金額から入らないことです。まず、手元から出せる自己資金の額を書き出します。次に、毎月いくらまでなら無理なく返していけるかを、今の家賃や生活費から考えます。この二つが決まって初めて、買える価格帯のおおよその幅が見えてきます。

そのうえで、住宅市場動向調査の中央値を「自分の見立てが世の中とどれくらいずれているか」を測る物差しとして使ってください。中央値より大きく上振れしているなら、その理由が説明できるか考えてみる。逆に大きく下振れしているなら、希望する立地や広さと折り合うか確かめてみる。統計はそういう使い方に向いています。

そして最後に、物件価格のほかにかかるお金を足します。仲介手数料の上限、登録免許税、印紙税、不動産取得税に加えて、令和7年度調査では住宅の購入を契機に購入した耐久消費財の合計金額の平均値が既存(中古)戸建住宅取得世帯で96万円、既存(中古)集合住宅取得世帯で74万円(中央値はそれぞれ60万円、50万円)と報告されています。家具や家電、車両などの出費です。これらを合計した額を「相場」と呼ぶことはできません。物件の価格帯、登記の内容、自治体、適用できる軽減措置によって、実際の金額は一つひとつ変わります。合計額は、あくまでご自身の条件で組み立てた見積もりとして扱ってください。

相談の前に確かめるチェックリスト

  • 統計の数字を見るとき、平均値か中央値か、住宅の種別と調査地域はどれかを毎回確かめる
  • 自己資金として出せる額と、毎月無理なく返せる額を先に書き出す
  • 仲介手数料の見積もりが、告示の上限の計算方法と合っているか確認する
  • 登録免許税・印紙税の軽減が、期限つきの措置であることを前提に見積もる
  • 物件がある都道府県の公式ページで、不動産取得税の税率・軽減・免税点を調べる
  • 住宅ローン控除は、国税庁の該当ページで要件を一つずつ自分に当てはめる(床面積が50平方メートル未満なら、特例既存住宅の合計所得金額1,000万円以下という別枠の要件も見る)
制度の一般的な考え方をまとめたものです。実際の取扱いは契約の内容や個別の事情によって変わります。判断が必要な場面では、不動産会社や専門家、行政の相談窓口にご確認ください。