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建物状況調査とは何を指す言葉か

中古住宅を見に行くと、「築年数のわりにきれいだけれど、見えないところは大丈夫だろうか」という不安が残ります。その不安に、制度として答えようとしているのが建物状況調査です。国土交通省が公表している「建物状況調査(インスペクション)活用の手引き」は、この調査を、国の登録を受けた機関が開催する講習を修了した建築士、すなわち既存住宅状況調査技術者が、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について目視や計測、非破壊検査を行うもの、と説明しています。

宅地建物取引業法でいう建物状況調査は、この要件を満たすものだけを指します。国土交通省の「宅地建物取引業法における建物状況調査に関するQ&A」は、講習を修了していない建築士や検査事業者が実施する調査は、宅建業法に基づく建物状況調査には当たらない、と述べています。世の中には「ホームインスペクション」「住宅診断」など似た名前のサービスが複数ありますが、同じQ&Aは、提供されているサービスごとに内容は異なるため、宅建業法の要件を満たすかは各サービス提供者に確認してほしい、としています。名前が似ていることと、制度上同じであることは別の話だと思っておくと安全です。

調査の依頼は、売主でも買主でもできます。手引きには、売主・買主どちらが実施してもかまわないが、買主が実施する場合は売主の同意が必要である、と書かれています。買いたい家は他人の持ち物ですから、勝手に調べることはできない、ということです。マンションの場合はもう一段あります。Q&AのA2-7は、マンションで建物状況調査を実施する場合、共用部分も調査の対象となるため、あらかじめ管理組合の了承を得る必要がある、としています。戸建てとマンションでは、話を通す相手が違うと覚えておいてください。

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調べる範囲と、調べない範囲

調査対象は二つに分かれます。一つは構造耐力上主要な部分で、手引きは基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するもの)、床版、屋根版、横架材(はり、けたその他これらに類するもの)を挙げています。もう一つは雨水の浸入を防止する部分で、屋根もしくは外壁、またはこれらの開口部に設ける戸やわくその他の建具、そして雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、その住宅の屋根もしくは外壁の内部または屋内にある部分です。要するに、家を支える骨組みと、雨を防ぐ皮の部分だと考えるとイメージしやすくなります。

逆に言えば、住んでいて気になりやすい設備は、基本の対象には入っていません。Q&Aは、給排水管路や給排水設備等は建物状況調査の調査対象ではないものの、オプション調査として依頼できる場合がある、と説明しています。同じQ&Aは、調査が原則として目視・非破壊検査により行われるため、たとえば基礎の調査について敷地内の地中の調査は含まれていない、とも述べています。壁を壊して中を見る調査ではない、という点は最初に押さえておきたいところです。

見られない場所が出ることもあります。Q&Aは、点検口がない、移動困難な家具があるといった事情で調査できなかった箇所については、「調査の結果の概要」および「報告書」に「調査できなかった」と記載される、としています。天候の影響で目視できない場合も同様に記載されるほか、調査実施者や売主と相談のうえ、後日再度調査を行うことも考えられる、とされています。報告書に空白ではなく「調査できなかった」と書かれる仕組みになっているので、そこは必ず読んでください。

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これは欠陥がないことの保証ではない

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。国土交通省の手引きは、調査対象の範囲を示した図のすぐ下に「全ての瑕疵がないことを約束するものではありません」と明記しています。Q&AのA1-1も、建物状況調査は既存住宅の基礎、外壁等の部位毎に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の有無を目視、計測等により調査するものであり、瑕疵がないことを保証するものではないが、住宅の品質に関する情報を提供することにより、劣化事象等を把握し、明らかにするものである、と説明しています。

つまりこの調査が答えているのは「調査した時点で、調査できた範囲に、劣化事象等が見つかったかどうか」であって、「この家は今後も大丈夫か」ではありません。報告書に劣化事象等が確認されなかったと書かれていても、それは目視・非破壊で見た範囲の話であり、将来不具合が生じないことを意味するものではない、という受け止め方が正確です。国土交通省は令和6年の改正で、標準媒介契約約款にも建物状況調査の限界(瑕疵の有無を判定するものではないこと等)を明記した、と説明しています。制度の側も、期待が過剰にならないよう注意を促していると読めます。

それでも調べる価値はあります。Q&Aは、調査時点における住宅の状況を把握したうえで取引ができ、取引後のトラブルの発生を抑制できること、住宅の状況に見合った売買価格で取引できること、調査結果をリフォームやメンテナンス等の計画の参考にできることを利点として挙げています。保証書ではなく、判断材料が一つ増える、という位置づけです。

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不動産会社に義務づけられていること

宅建業者の役割は、しばしば誤解されています。まず前提として、Q&AのA1-5は、既存住宅を売買する場合に必ず建物状況調査を実施しなければならないものではありません、とはっきり述べています。宅建業者に「調査を実施する義務」があるわけでもありません。

業者に課されているのは、まず媒介契約の段階です。Q&AのA4-2は、宅建業者は媒介契約書に「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」について記載する必要があり、また、あっせん「無」とするときは、その理由を記入することとされている、と説明しています。ここから、売主や購入希望者に対して建物状況調査の制度概要等について紹介することが求められる、とも書かれています。そのうえで、依頼者の希望があり、あっせんが可能な場合には、媒介契約書にあっせんの実施を明記するとともに、具体的な手配を行うことになる、という流れです。あっせんとは何かについては、A4-1が、調査実施者が作成した調査費用の見積もりを媒介依頼者に伝達することなどが行われるように手配することであり、調査実施者に関する情報を単に提供することは「あっせん」ではない、と定義しています。

次が重要事項説明です。こちらは条件つきで、宅建業法第35条第1項第6号の2イに基づき、建物状況調査が実施されている場合に、その「調査の結果の概要」に記載されている調査対象部位ごとの劣化事象等の有無について、宅建士から説明されます。調査が行われていない物件について、業者が自分で調べて説明する制度ではありません。なおQ&AのA5-4は、貸借の場合も建物状況調査の結果の概要について重要事項として説明しなければならない、としています。

三つめが契約後に交付される37条書面で、「当事者の双方が確認した事項」の記載です。A7-2は、原則として、既存住宅について建物状況調査等専門的な第三者による調査の結果の概要が重要事項として説明されたうえで、契約締結に至った場合が該当する、と説明しています。A7-3は、当事者の双方に建物の構造耐力上主要な部分等の状況について確認する義務はないが、取引後のトラブル防止の観点から、建物状況調査を実施し、確認することが望ましい、としています。義務と推奨が丁寧に区別されているので、ここは混ぜずに読んでください。

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2024年(令和6年)に変わった点

建物状況調査の制度は、平成30年(2018年)4月に建物状況調査の活用の促進等を内容とする宅地建物取引業法の改正が施行されて始まりましたが、そこで止まってはいません。国土交通省は、令和6年4月1日施行の改正について、重要事項説明の対象となる調査結果の考え方を見直したと説明しています。

具体的には、Q&AのA1-13が、重要事項説明の対象となる建物状況調査は、木造戸建て住宅の場合は調査を実施してから1年以内、鉄筋コンクリート造等のマンションの場合は2年以内のものである、と述べています。共同住宅等については、住戸内・住戸外それぞれの調査を異なる調査者がそれぞれ実施することも可能とされたことを踏まえ、既存住宅売買瑕疵保険への加入に必要な現場検査結果の要件(共同住宅の場合)と同様に、調査の実施から2年を経過していないものへと見直した、と説明されています。あわせて同じA1-13は、調査結果そのものに有効期限はないが、時間の経過とともに建物の現況と調査結果との間に乖離が生じることが考えられる、とも書いています。

もう一つが媒介契約の実務です。国土交通省は、令和6年の改正で標準媒介契約約款に、建物状況調査を実施する者のあっせんを「無」とする場合における理由の記載欄を設けるとともに、建物状況調査の限界(瑕疵の有無を判定するものではないこと等)について明記した、としています。あっせんしないなら、なぜしないのかを書く。調査には限界があると伝える。この二つが書面の側に組み込まれた、というのが現行の姿です。

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既存住宅売買瑕疵保険との関係を正しく理解する

建物状況調査と既存住宅売買瑕疵保険は、よく一続きのものとして語られますが、同じ制度ではありません。手引きは、既存住宅の構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分について瑕疵(欠陥)が発見された場合に生じる補修費用などの経済的な負担をカバーするのが、検査と保証がセットになった既存住宅売買瑕疵保険である、と説明しています。ただし手引きは、保険に加入していれば引渡しを受けた後に対象部分の瑕疵が発見された場合に住宅瑕疵担保責任保険法人から補修費用等が支払われる、としつつ、「一定の免責事由あり」とも注記しています。何でも支払われるわけではありません。

肝心なのは加入の条件です。手引きは、既存住宅の引渡し前に住宅の検査を行い、基準に適合していれば加入できます、と書いています。つまり判定があります。あわせて手引きは、保険に加入する上でのポイントとして、新耐震基準等に適合しているなど一定の要件を満たす中古住宅が対象です、とも記しています。建物の劣化の有無だけでなく、その住宅が要件を満たすかという入口の条件がある、ということです。Q&AのA3-2も、加入に当たっては、一定の条件を満たせば住宅瑕疵担保責任保険法人の登録を受けた検査事業者が実施した建物状況調査の結果を活用することができる、という言い方をしており、調査をすれば自動的に加入できるとは書いていません。さらにA3-3は、「調査の結果の概要」に「調査できなかった」または「劣化事象有り」の記載がある場合には、そのままの状態では既存住宅売買瑕疵保険に加入することはできない、と明確に述べています。調査できなかった部位は再度調査が必要になり、劣化事象等がある場合は内容に応じて修補したうえで再度検査を行い、劣化事象等がないことが確認される必要がある、とされています。

もう一点、依頼先の選び方に関わる話があります。Q&AのA1-2は、既存住宅売買瑕疵保険への加入を希望する場合は、住宅瑕疵担保責任保険法人の登録を受けた検査事業者の検査員に依頼する必要がある、としています。保険まで視野に入れているなら、「既存住宅状況調査技術者であるか」に加えて「保険法人の登録を受けた検査事業者か」も確かめておく必要がある、ということです。手引きは、保険の加入に必要な検査は建物状況調査と併せて実施することができ、売主・買主(予定者を含む)どちらでも検査を依頼できる、とも記しています。加入条件の詳細は各住宅瑕疵担保責任保険法人に問い合わせるよう案内されているので、個別の物件については保険法人に確認するのが確実です。

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いつ、誰に頼むと間に合うのか

タイミングの話をします。手引きが示す宅建業者を介する売買の流れは、媒介契約の締結、調査・検査の申込み、調査・検査の実施、重要事項説明、売買契約の締結、保険証券発行申請、引渡し、という順序です。調査結果の概要は重要事項説明で説明されるものですから、契約を決める材料にしたいなら、重要事項説明より前に調査が終わっている必要があります。内見の直後に気になり始めたなら、その時点で動き出して早すぎるということはありません。

購入希望の物件を調べたい場合の手順も示されています。Q&AのA1-10は、購入希望の既存住宅について建物状況調査を実施するには、あらかじめ売主の承諾を得る必要があるため、宅建業者にその旨を伝えてほしい、としています。A4-8も、購入希望者に調査実施者をあっせんする場合には、建物の所有者である売主に建物状況調査の実施についてあらかじめ承諾を得る必要がある、と述べています。なお手引きは、保険の加入に必要な検査について、売主・買主(予定者を含む)どちらでも検査を依頼することができる、としています。

誰に頼むかについては、手引きが、宅建業者に仲介を依頼している場合は宅建業者に調査実施者のあっせんを相談すること、また「既存住宅状況調査技術者検索サイト」から調査実施者を検索することが可能であることを案内しています。時間と費用の目安も公表されており、手引きは、物件の規模にもよるが時間は1〜3時間程度が見込まれ、調査費用は物件の規模に加えて調査実施者によっても異なるものの6万円程度〜が目安となる、としています。Q&AのA1-8も、費用について基準の設定はなく各調査実施者により異なるが、標準的な検査内容の場合、6万円程度〜が目安となる、と同じ説明をしたうえで、宅建業者から調査実施者のあっせんを受ける場合、あっせん料を支払う必要はありません、と明記しています。費用は依頼者(売主、購入希望者等)が負担するのが一般的と考えられる、というのがA1-11の説明です。

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報告書を受け取ったあと、どう読むか

調査が終わると、調査実施者から「調査の結果の概要」と「報告書」が渡されます。A5-1は、「調査の結果の概要」を、建物状況調査を実施した建築士(既存住宅状況調査技術者)により作成される、調査対象部位ごとの劣化事象等の有無などが記載された書面である、と説明しています。読むときはまず、部位ごとに「劣化事象有り」「調査できなかった」がどこに付いているかを確認してください。保険を考えているなら、この二つの記載がそのままだと加入できない、という先ほどの話に直結します。

書類の扱いについても定めがあります。A1-16は、調査の依頼者が「調査の結果の概要」および「報告書」を保管する義務はないが、重要事項説明に必要な書類となるため大切に保管してほしい、としています。媒介を依頼している場合には「調査の結果の概要」を宅建業者に渡してください、とも書かれています。A5-8は、買主がリフォームやメンテナンス等を考えるうえで「報告書」が参考となるため、依頼者が売主の場合にはこれらの書類を買主に渡すことが望ましい、としています。概要だけでなく報告書も見せてもらえないか、聞いてみる価値があります。

内容がよく分からないときは、遠慮せず詳しい説明を求めてください。A5-6は、宅建業者は売主または貸主を通じて、調査実施者に対して、購入または賃借の希望者が詳細な説明を求めていることを連絡し、詳細な説明のための調整を行うことが望ましい、としています。調査結果への責任の所在も整理されていて、A4-7とA7-5は、建物状況調査の結果に対する責任は原則として調査実施者が負うこととなり、調査実施者の不注意により劣化事象等の見逃しがあった場合は、依頼者から損害賠償を受ける可能性がある、と述べています。A5-3は、「調査の結果の概要」の内容について原則として宅建業者は責任を負わない、としています。誰に何を聞けばよいかを知っておくと、話が早く進みます。

相談の前に確かめるチェックリスト

  • 依頼先が国の登録講習を修了した既存住宅状況調査技術者かを確認する
  • 報告書に「調査できなかった」と記された部位がどこかを読む
  • 媒介契約書のあっせんの有無欄と、「無」の場合の理由を確かめる
  • 重要事項説明の前に調査が終わる日程になっているか逆算する
  • 瑕疵保険も考えるなら保険法人の登録を受けた検査事業者かを聞く
  • 給排水設備などを見たい場合はオプション調査の可否を相談する
  • マンションなら管理組合の了承が必要になることを早めに確認する
制度の一般的な考え方をまとめたものです。実際の取扱いは契約の内容や個別の事情によって変わります。判断が必要な場面では、不動産会社や専門家、行政の相談窓口にご確認ください。